前回は、「管理費」の見直しについて考えました。今回は、「自主管理」をテーマにします。
マンションの管理形態は、大きく別けると「委託管理」と「自分たちで管理する(自主管理)」の二つに区分できます。
「委託管理」とは、管理会社へ管理業務の一部または全部を委託する方式のことで、「自主管理」は管理組合運営を自分達で行っているマンションです。もちろん委託管理であっても各問題の決定にあたっては理事会・総会などの承認が必要となることは、変わりません。
実態として、自主管理マンションが全体の約1割弱で、築年数が多いマンション、比較的小規模なマンションに多く見られ、それ以外は管理会社による委託管理マンションとなります。費用負担の面からみていくと自主管理が費用的に負担が少なく、一部委託管理、全部委託管理となるに従って費用の負担が多くなります。
この自分達で管理しているマンションも、多くの場合、最初からそうだったわけではありません。マンションに入居して、何年か経過する中で、管理品質、業務対応、委託経費の多寡など、いろいろな疑問や不信・不満が出て、その解決策としてきちんと清掃させたい、滞納金を減らしたい、管理委託費を下げたいといった目標意識を持ち、自分達の手で運営を始めたわけです。
新築分譲マンションの場合、管理組合運営の骨格部分、特に管理費(初期設定額)や修繕積立金などの費用は、(分譲会社が)管理組合成立以前の段階、分譲募集の段階で企画立案し、管理会社も予定されています。
第一回目の管理組合の定期総会で、管理組合役員(理事長や理事・監事)が選出され、同時にこの分譲会社が作成した当初の管理プランを承認するというのが通常の進行です。分譲された一室を購入した区分所有者・組合員は、この分譲会社が作った管理規約、管理費、管理会社(多くの場合分譲会社の子会社や系列会社等)との管理委託契約等を受け入れざるを得ないのです。
ところが当初の分譲会社の作成した管理プランは当該建物の実態をキチンと反映していないことが多く、実際に居住している者から見たときに非常に不都合であるケースが多かれ少なかれ発生しています。
さらに、管理会社の担当者・管理人の運営能力不足なども重なり不都合な項目が目につくようになります。ここから、管理の形態や管理費用の見直しを図ろうという機運が生じるわけです。
もちろん、このような場合、管理費の見直しや管理会社の変更などで対応している場合が殆どですが、自分たちで運営していこうとする自主管理を選択するケースもあるわけです。
出納・会計・清掃・定期点検・修繕といった基幹事務を管理会社に頼ることなく自分たちで行う方法を採用した場合、委託管理に比べると自分たちの業務負担は多くなりますが、管理品質やコスト面について、自分たちの納得がいく形で運営することができます。特にコスト面では大きな差が出てくるメリットがあります。
一般的に自主管理をしているマンション管理組合の特徴は、
- 管理に対する居住者の意識が高く、管理組合内で活発な議論が展開される。
- 管理業務について中心となって運営している熱心な役員が数人いる。
- 管理コストを安く抑えることができ、当然徴収している管理費が安い。
ということがいえます。
しかし、「自主管理」による管理組合運営は全てが良い面ばかりではありません。以下のような問題点も抱えています。
- 関心のある居住者がボランティア主体で役割を分担して対応していたが高齢化や賃貸住戸の増加で、役員のなり手が少なくなり、同じ役員が長く就任するなど特定の居住者に大きな負担がかかっている。
- もともとマンション内にマンション管理に詳しい専門家がいないので、最近のように法律が複雑になり、更にマンションを取り巻く社会環境の急激な変化等の事態に適正に対応することが困難になっている。
- 運営をしている長年務めた役員と居住者との間の信頼関係が希薄となり意見の対立が多くなり、問題解決に時間がかかる。調整役がいない、等。
こうした問題を抱えた管理組合の中には自主管理をやめ再び管理会社の活用を検討したり、自主管理を継続するがマンション管理士を活用し、外部の意見を取り入れるなどの方式を検討したり、または一部委託管理を導入ることを検討しているところもあります。
費用負担を考えると、自主管理が最良の方式であるかのように思えますが、自主管理を継続して行える管理組合であるためには、単に費用の節減だけでなく、自分たちのマンションをよりレベルの高いものにしようという意思と管理組合の活動を支えるマンション管理に精通した事務局長のような存在が必要となり、さらに、この役員への負担軽減を図るため各役員が各々の場面で助力していくことが必要となるわけです。